2014/12/02

先天性股関節脱臼でも厚生年金請求はできます。

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↓風邪はだいぶ治りました!

変形性股関節症での障害年金請求の結果が出ました。
結果は3級で無事に支給となりました。

あまりブログに請求事例を書くことはないのですが、
今回書いてみようと思ったのは、先天性股関節脱臼のまま
生育したことが、診断書等に明記されていても
「障害厚生年金」の受給権を取得できたケースだからです。

おそらく障害年金を扱う社会保険労務士のサイト等をみると、
先天性股関節脱臼についてはこう書かれていると思います。

先天性股関節脱臼で生育した場合

先天性股関節脱臼については、完全脱臼のままで生育した場合は、
厚生年金保険の期間外発病となりますが、それ以外のもので
青年期以降になって変形性股関節症が発症した場合は、
症状が発症した日を発病日とします

この記載は、実は障害認定基準には書かれていませんが、
障害年金実務の本に掲載されているので比較的有名なものです。

これは日本年金機構障害年金業務部が出している
年金事務所窓口用の「障害厚生受付事務手引」に記載されています。

この規定は「発病日・初診日のとらえ方」という事項に記載され、
これを素直に読むと、完全脱臼のまま生育した場合は国民年金、
それ以外は厚生年金期間中に発病したと捉える場合がある、
というように読むことができます。

しかし、現行の障害年金制度は初診日主義で、
初診日時点で厚生年金だったか、国民年金だったかで
請求する制度が変わってきます。

つまりここで言及されているのはあくまで「発病日」であって、
先天性股関節脱臼などの場合においても
厚生年金請求の可能性があるはずです。

医学的な考え方と年金上の捉え方

しかし、受付事務手引にこう記載されていることで
窓口で「先天性股関節脱臼は障害基礎年金の請求となるので、
3級(人工関節)の場合は年金支給がないことから、
請求しても受給することができません」という
案内を受けてしまった方も多くおられるのではないでしょうか。

また医師からは「先天性」であることを強調され、
障害年金上でも障害基礎年金請求しかできないものと
考えられている方もおられます。

ですが、これは誤りです。

本請求では診断書等に「先天性股関節脱臼のまま生育」と明記されても、
その後の経過を充分参考資料として添付することで、
無事に今回障害厚生年金として受給権が発生しています。
その分膨大な資料を付けましたが・・・。

医学的には先天性であっても、年金上では必ずしも
そう取り扱わないことがあるということです。

しかし一方では同様の請求で不支給となった方の
再審査請求を行っています。

この方はご自身で請求され、本格的な療養に入ったのが
厚生年金期間中であるにも関わらず、幼少期の股関節異常の経歴から、
厚生年金期間中に初診日があると認められない、として
不支給の決定を受けてしまいました。これは30年以上前の受診です。

その後、当事務所の審査請求でも棄却されています。

類似したケースでも請求方法によって
このように大きな差がでてしまうということです。

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カテゴリー: 障害年金。

2014/11/21

再審査請求で処分変更。再審査請求の流れ。

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↓ちょっと途中で脱線しました。

先日、再審査請求の公開審理を控えた件で、
処分変更があり、求めていた処分(不支給→2級)に変更となりました。
今月公開審理の予定だったんですが「処分変更」というのは
当方の主張を認めて、保険者が処分を取り消すということになります。

この変更により訴えのもとになる不服がなくなるので、
この場合は審査請求、再審査請求は取下げて事務終了です。

この段階で取り消す事務担当は、厚生労働省年金局の事業管理課です。
ここが再審査請求段階での認定事務を行っていて、
再審査請求で処分変更がかかる場合はここから連絡がきます。

元々の原処分(今回で言えば不支給)というのは、
日本年金機構が決めたものですから、日本年金機構が決めた処分を
親玉(表現がいまいちですが)である厚生労働省が取り消す形になります。

ここでもう一つ抑えておきたいのは、
再審査請求まで行っているということイコール、
社会保険審査官が審査請求を棄却しているという事実です。
(飛躍請求を除きます)
今回も社会保険審査官は日本年金機構の処分が妥当という判断でした。

これを冷静に見るととても怖いですよね。

役所は2回間違えて、再度の不服の申し立て、
3回目の審査でようやく受給を認めたということになります。
つまり、行政(国)は処分を間違えますし、
妥当でない処分を下すことがあるんです。

でもここまで来ると普通は一般の方が自分でやるのは無理ですし、
そもそも間違いなのかどうか、どこがどう間違いなのかを
適切に掴むことすら容易ではないのが通常です。

そもそも障害認定基準を隅から隅まで目を通している請求者、
年金機構の窓口担当者というのはそう多くはないはずです。

これは窓口担当者の能力が低いというのではなくて、
窓口では幅広い年金の質問に乗っていますから、
全てを網羅することは物理的に無理なんです。

それは年がら年中年金をやっているボクが、
老齢年金、遺族年金のプロフェッショナルと言えないのと同じです。
年金制度というのはそれだけ複雑なんですねー。

*余談ですが、ボクは社会保険労務士試験では年金法が得意で、
 本番でも国民年金法、厚生年金保険法は満点でした。
 超どーでもいい情報ですが(笑)

審査請求の流れ、再審査請求の流れというのは
実務をやっていないと中々つかめませんので、
社会保険労務士に依頼する際はその辺をきちんと知っているか、
というのを確認されるとトラブルは少ないと思います。

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カテゴリー: 障害年金。

2014/11/11

加入月数計算時のミス。

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↓怖い怖い。

先日、病院からのご紹介で依頼となった方。

ご自身で1年前に手続きをしようとしたけれど、
一度は納付要件○と言われ書類一式を渡されたが、
書類を揃えた後、請求する時に納付2月不足×と言われ、
結局請求できなかったという。

病院のワーカーさんが非常にしっかりした方で、
自治体や年金機構にも働きかけたがだめだったそう。
そこでご相談となった。

どう見ても簡単には行かないケースだけれど、
やはりこうしたものこそ社労士がやらなければいけないと思う。
ここでボクらが諦めれば、もう永久に受給権は得られない。

既に受診状況等証明書は手元にあるので、
念のため初診日から計算。

スタッフ「あれ、これ納付満たしてるんじゃないですか」

白木「うそ?そんなことは・・・あれ、これ満たしてるんじゃね」

坂田「そんなことだいだろ・・・年金事務所が蹴ったんだから。
   ・・・あれ、満たしてる?」

一同沈黙。これは年金事務所に確認しよう。

某街角「うーん、これは満たしてますね」

スタッフ「でも、ある年金事務所が請求を断ってるので。
     念のため確認してもらえませんか」

某街角「じゃあ年金事務所(蹴った事務所とは別)で
   一緒に計算してもらいましょう」

しばし待って・・・。
年金事務所「足りてます」

すぐに蹴った年金事務所へTEL。

今までの経緯を全て話して
「他の年金事務所では○と言われている」
「ウチも○だと思う。再度確認してもらえませんか」と依頼。

TELから3時間ほど経過して折り返し。
・・・やはり足りているとのことだった。

初診月時点で3分の2要件をぴったり(!)で満たしていて、
この方には20歳前に厚年加入期間がある。
請求時の計算でその期間を入れなかったんじゃないかな・・・。
もしくは単純な数え間違い。

今後はブロック本部と対応を協議するとのこと。

もしこのままいけば行政の瑕疵に当たる。
そのため認められれば請求日が遡って手続きできると思うけれど、
その場合も確認作業にかなり時間がかかる。

怖いのは「行政は間違える」という観点からアプローチしたのは、
ウチの事務所だけだった、ということだ。
もちろんウチだって「念のため」という確認作業だった。

自治体も年金事務所が間違えるとは思わないし、
年金機構がダメならダメです、と言わざるを得ないだろう。
もちろん病院のワーカーさんもここまでは無理だと思う。
これは責められない。

ただ、行政も運用しているのは人間だ。
間違えることはありえるし、こういう地道な確認が、
功を奏することもあるのだと改めて思う。

しかし今回はご相談になったっから良かったけれど・・・
このままスルーしてたらと思うと本当に怖い。

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カテゴリー: 障害年金。