2013/11/16

障害の固定性と受給期間、そこにある矛盾。

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ある方の再審査請求と並行して進めていた、
支給停止事由消滅届が通り、
再度障害基礎年金が支給されることになった。

前にも書いたけれど、こうした「滑り止め」は重要だ。
今回も有効だったことになるが再審査は続行することとなった。
国の考え方を聞いてみたい、とご家族が望んだからだ。

ご本人の実質的な障害の程度は変化していない。
また今後も大きく変化はしないだろうと思われる。

傷病は精神発達遅滞と発達障害だ。

先日、東京地裁であった裁判も精神発達遅滞で、
二十歳時点の診断書がなくても遡及を認めるべきか、
というのが争点だった。

結論としては、裁判所は国に支給を命じた。

判決文も読んだけれど、理由の一つにあげたのは
精神発達遅滞の障害の固定性だった。

二十歳時点の診断書は確かに存在しない。
それでも裁判所が支給を認めたのは、現時点から推測できること、
つまり固定性が認められることと、
また当時の状態を陳述してくれる方がいたからだ。

固定性という部分だけを見ると、
例えば就業訓練を経て、就労能力が向上して、
障害者雇用されるケースというのも多々あるだろうと思う。

確かにこうした活動を経て就労する方はいるわけで、
それで能力が向上していない、と断言するのも、
携わる方やご家族の心境を思うと忍びない。

国はそうした間隙を突くような
支給停止を行っているようにも思える。

しかしこうしたケースを「障害年金を支給停止するほどの
日常生活能力を獲得した」と見るかとなるの話は別だ。

特に障害者雇用の現場は様々で、待遇の差が大きく、
経済的に独立するのに充分でない方が多く、
一口に「就労」といっても健常者と同等に見ることはできない。

直近でも社会保険審査会は、就労で賃金を得た事実だけでは、
支給停止する理由とは言えない、という裁定をしているし、
また、周囲や本人の努力を無にするような支給停止は酷だ。

社会保障費の増大という点から、甘いという方もおられるかもしれない。
しかしこうした方はあらゆる世代にいたはずで、
今の世代だけ受給できない、というのも不公平だと思う。

固定性という点に話を戻すと、知的障害の方は
5年認められる方もいれば、永久固定の方もいる。
こうした認定をしているのは、
その固定性を年金機構も認めているからだろう。

しかし1年という方もいる。今回の方は1年だ。
ここに明確な差は、少なくともボクには見つけられない。

数年前に二十歳到達で受給権を取得し、
去年支給停止され、今年は支給停止が解け、
来年はまた支給停止の可能性がある。

そういう障害ではない、と裁判所も年金機構も
社会保険審査会も認めながら、こうした認定が多々ある。

それが障害年金だ。

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2013/11/12

あるはずのない「初診」はこうして生まれる。

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最近は難しい請求が非常に多く・・・うなっています。

特に多いのは「初診が確定しない」ケースです。
初診日は大変重要なのはもちろんなのですが、
そう言われても、まさか却下されるとは・・・という方が多いですね。

これから請求される方、審査請求の方、再審査請求の方、
審査待ちの方、全ての段階でご依頼者がおられます。

未確定の要素が多く残ったまま請求して、
その中で納付要件が絡んでくるとまずNGです。
制度をまたぐ(障害基礎年金・障害厚生年金)場合についても
同様に厳しく見られます。

病気で言うとこうした経過を辿るのは、腎疾患が多いですね。
慢性腎不全(糖尿病、IgA腎症などに由来)などは、無症状の期間が
長期間経過し、ゆっくり腎不全に移行していきます。

大体皆さん、初診は健診で指摘、精密検査で経過観察となり、
翌年からは指摘はされるものの、受診はせず。
このまま長期間経過(10年とか20年)とかして、
浮腫みや疲労感などで症状が出て、ここで病院へ行かれるんですね。

病院にて

そこではおそらくDrとこのようなやり取りがあると思われます。
(D・・・医師、 請・・・請求される方)

D「だいぶ進んでますねー、今まで健診などで何も言われなかった?」

請「えーと、前に指摘されて受診したことがあります」

D「それはいつ頃のこと?」

請「10年・・・12,3年前でしたかね。はっきり覚えてませんが」

D「なるほどねぇ・・・(カルテに12年前と書きかき)。
それでは腎機能を維持していくため、今後は受診なさってください」

取れるはずのない「初診」

こうして「12年前」の受診歴が作成されます。

この間に、前の精密検査(もしくは短期間の加療)の受診記録は、
カルテ廃棄によりなくなってしまいます。
カルテの保存年限は最後の書き込みから5年だからです。
*もっと長期間持っている病院もあります

そして年金請求される時に、
受診状況等証明書にはばっちり記載されます。

12年前に他院受診。その後悪化し当院初診」

もちろん医師に悪気は全くありません。請求される方も同じです。
将来の年金の支給不支給が、このやり取りで左右されるなんて、
お互いに当時は全く思っていないはずです。

こうして帳尻合わせできない記録が生まれていきます。

医師にしてみれば「カルテに書いてある」、
請求者にしてみれば「その時期は受診していない」記録です。

その後はこうなります。

年金事務所にて

年金機構「12年前?受診状況等証明書のこの記載はなんですか?」

請「いや、ちょっとよくわからないです」

年金機構「わからないじゃ困るんですよね」

請「でもその頃は受診していないはずです」

年金機構「ふーむ」

請「その頃は転職や引っ越しなどもあってバタバタしてまして・・・
 もう当時の書類は何もないんですよね」

年金機構「そうですか・・・じゃあこれで出しますか。
    あとは本部が審査でどう見るかですので」

請「はい」

a0006_003209

実際は認定までに、数回書類が戻ってきたりするかもしれません。

しかし何も提出できなければ、最終的に出る結果は「却下」です。
ありもしない「12年前」の受診が理由です。

こうなってしまうとやはりなかなか難しいです。

この期間が全て厚生年金期間中であれば、そのまま認定されたり、
その後の審査請求、再審査請求で認められる可能性はあります。
その辺りは書類の集まり具合で変わってきます。
また国民年金に未納さえなければ、同じように可能性はあると思います。

しかし、ここに未納がどっさりあるとかなり状況は厳しくなります。
ですから、こうなる前にきちんと調べ尽くして請求するべきです。

たとえば社会保険審査会の裁決では「蛋白尿」や「糖」など
健診で指摘されたからと言って、それを以てただちに
腎不全の初診日とするのは不適当として、
最終的に支給を認めているものもあります。

それはこのように長期間を経過するうちに就労して、
厚生年金を長期に渡って納めた人を救済するためです。

しかし年金機構はこのような取り扱いをやめません。
「アンケート」と称して、浮腫みや口渇を覚えたのはいつか、と聞きます。

アンケートは実質「不支給」や「却下」とするための書類です。
その記載を採用して不支給の根拠とするのは
決定書でもいくつも見ていますが、支給する、としている決定は
残念ですが見たことがありません。

たとえば糖尿病と診断されても食餌療法で維持、
もしくは改善される方も多くおられます。
ですからその後改善されて長期間経過すれば、
アンケートの記載が初診になるとは必ずしも限りません。

しかしそこまできちんと説明され、また理解してから
記載している請求者はどれほどいるでしょうか。

そしてまた却下、審査請求、再審査請求が増えていきます。

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カテゴリー: 障害年金。

2013/11/10

同じ障害状態なら同じ等級になる、という幻想。

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昔、法人営業をしているとき、上司が言っていたこと。
「日曜日休んでもいいから、寝る前10分だけ、
週明けの仕事のことを考えろ」

まあその通りだなと思うんですが、個人事業主となって、
せめて寝る前10分くらいは仕事を忘れたい(涙)
そんな風に思うかなあ…。

と言いつつ、日曜の夜にブログを書いております笑

今日は真面目に障害年金の話。

先日、障害ねんきんナビに、
「障害年金請求は社労士に依頼すべきか」
という記事を書いたんですが、一旦サクっと消しました笑

これを書く前に、一つきちんと
お伝えすべきことがあると思ったからです。

それは…

「同じような障害の方なら常に同じ等級になる」
というのは、幻想であるということです。

例を挙げてみるならば、交通事故で脊髄損傷を負い
下肢に障害が残る方が、障害の状態が
医学的常識からほとんど見込めず、
リハビリもしていないのに突如支給停止になる、
ということが想像できるでしょうか。

これは実際にウチで扱った事例で、
既に複数回更新してきて、
突然支給停止を喰らったというケースです。

この時は審査請求からお受けして、再審査までいきましたが負けました。

主治医からは医学的見地から回復はあり得ないこと、
障害状態は数年前から固定しており、
リハビリの効果もなく既に行っていないこと、
むしろ加齢により健側の筋力や可動域が制限され、
日常生活能力は低下していること、など意見書として提出しました。

それでも審査会まで行って普通に負けます。
これが障害年金の現実です。
もちろん通せる社労士もいるかもしれませんが…。

なぜこういうことが起きるか。
それは、現況届(障害状態確認届)を出させる以上、
そこでの記載がこうした事情よりも優先されるからです。

この時は何気なく書いて出した関節稼働域、
筋力の丸の付け方が前回と変わっていました。

たとえば「著減」と「半減」などです。

こんなのは計測者の主観で変わりかねないものです。
医学的な不可逆性が優先されるべきだとボクは思います。
しかし、国(年金機構や厚労省)はそう考えておらず、
事実そのように取り扱っていない、ということです。

こういう時実務ではどうするかと言うと、審査請求と並行して
「支給停止事由消滅届」を、診断書を別に取って出しておきます。
再審査で負けても、これがもし通れば、
支給停止の期間を最小限にできるからです。

支給停止事由消滅届ならば、一年待たずにすぐに出せます。

こういうことはネットにはあまり載りません。
年金事務所、市町村の年金課でもなかなかわかりません。
しかし障害年金を扱う社労士なら、これは当たり前のことです。

この時も再審査は負けましたが、支給停止事由消滅届が通りました。
くどいようですが、最初から障害状態は変化していません
障害年金事務はそんなもんなんです。

だから「同じような障害の方なら常に同じ等級になる」というのは
幻想もいいところなのです。

しかし誰かは言います。「障害年金は自分でできますよ」
誰かも言います。「社労士なんて信頼できない」

もちろん自分で手続きできるケースもあるでしょう。
信頼できない社労士もいるかもしれない。
しかし「自分と同じ職業なら信頼できる」というのは妄信です。

そしてこうした現実を知らずに言うのは無責任です。
こういったケースに最後まで(支給をまた得られるまで)
責任を取れるならまだしも、です。

ここまでできるのは社労士ぐらいです。
もちろん費用はかかりますが、
それ以上に得られる利益があります。

だめなら訴訟ですが、そこでも社労士のサポートの余地はあります。

「一人で出来ますよ」と言われて、不支給になって、
そこでご依頼となるのは年間でもいくつもある話です。

しかし、既に処分後の審査請求からだとなかなかきついんです。
「始めからこの資料出せてたらなあ…」というのも多々あります。

そうしたことも含めて、社労士に依頼する、
ということはどういうことかをお考えいただきたいです。

当事務所は着手金はきちんといただきますが、
一般的に障害年金の社労士報酬の大部分は成功報酬です。
結果が伴うと報酬か生じるというのは良心的だと思います。

治せなくても費用がかかる医療とは違います。

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