2013/11/12
あるはずのない「初診」はこうして生まれる。
最近は難しい請求が非常に多く・・・うなっています。
特に多いのは「初診が確定しない」ケースです。
初診日は大変重要なのはもちろんなのですが、
そう言われても、まさか却下されるとは・・・という方が多いですね。
これから請求される方、審査請求の方、再審査請求の方、
審査待ちの方、全ての段階でご依頼者がおられます。
未確定の要素が多く残ったまま請求して、
その中で納付要件が絡んでくるとまずNGです。
制度をまたぐ(障害基礎年金・障害厚生年金)場合についても
同様に厳しく見られます。
病気で言うとこうした経過を辿るのは、腎疾患が多いですね。
慢性腎不全(糖尿病、IgA腎症などに由来)などは、無症状の期間が
長期間経過し、ゆっくり腎不全に移行していきます。
大体皆さん、初診は健診で指摘、精密検査で経過観察となり、
翌年からは指摘はされるものの、受診はせず。
このまま長期間経過(10年とか20年)とかして、
浮腫みや疲労感などで症状が出て、ここで病院へ行かれるんですね。
病院にて
そこではおそらくDrとこのようなやり取りがあると思われます。
(D・・・医師、 請・・・請求される方)
D「だいぶ進んでますねー、今まで健診などで何も言われなかった?」
請「えーと、前に指摘されて受診したことがあります」
D「それはいつ頃のこと?」
請「10年・・・12,3年前でしたかね。はっきり覚えてませんが」
D「なるほどねぇ・・・(カルテに12年前と書きかき)。
それでは腎機能を維持していくため、今後は受診なさってください」
取れるはずのない「初診」
こうして「12年前」の受診歴が作成されます。
この間に、前の精密検査(もしくは短期間の加療)の受診記録は、
カルテ廃棄によりなくなってしまいます。
カルテの保存年限は最後の書き込みから5年だからです。
*もっと長期間持っている病院もあります
そして年金請求される時に、
受診状況等証明書にはばっちり記載されます。
「12年前に他院受診。その後悪化し当院初診」
もちろん医師に悪気は全くありません。請求される方も同じです。
将来の年金の支給不支給が、このやり取りで左右されるなんて、
お互いに当時は全く思っていないはずです。
こうして帳尻合わせできない記録が生まれていきます。
医師にしてみれば「カルテに書いてある」、
請求者にしてみれば「その時期は受診していない」記録です。
その後はこうなります。
年金事務所にて
年金機構「12年前?受診状況等証明書のこの記載はなんですか?」
請「いや、ちょっとよくわからないです」
年金機構「わからないじゃ困るんですよね」
請「でもその頃は受診していないはずです」
年金機構「ふーむ」
請「その頃は転職や引っ越しなどもあってバタバタしてまして・・・
もう当時の書類は何もないんですよね」
年金機構「そうですか・・・じゃあこれで出しますか。
あとは本部が審査でどう見るかですので」
請「はい」
実際は認定までに、数回書類が戻ってきたりするかもしれません。
しかし何も提出できなければ、最終的に出る結果は「却下」です。
ありもしない「12年前」の受診が理由です。
こうなってしまうとやはりなかなか難しいです。
この期間が全て厚生年金期間中であれば、そのまま認定されたり、
その後の審査請求、再審査請求で認められる可能性はあります。
その辺りは書類の集まり具合で変わってきます。
また国民年金に未納さえなければ、同じように可能性はあると思います。
しかし、ここに未納がどっさりあるとかなり状況は厳しくなります。
ですから、こうなる前にきちんと調べ尽くして請求するべきです。
たとえば社会保険審査会の裁決では「蛋白尿」や「糖」など
健診で指摘されたからと言って、それを以てただちに
腎不全の初診日とするのは不適当として、
最終的に支給を認めているものもあります。
それはこのように長期間を経過するうちに就労して、
厚生年金を長期に渡って納めた人を救済するためです。
しかし年金機構はこのような取り扱いをやめません。
「アンケート」と称して、浮腫みや口渇を覚えたのはいつか、と聞きます。
アンケートは実質「不支給」や「却下」とするための書類です。
その記載を採用して不支給の根拠とするのは
決定書でもいくつも見ていますが、支給する、としている決定は
残念ですが見たことがありません。
たとえば糖尿病と診断されても食餌療法で維持、
もしくは改善される方も多くおられます。
ですからその後改善されて長期間経過すれば、
アンケートの記載が初診になるとは必ずしも限りません。
しかしそこまできちんと説明され、また理解してから
記載している請求者はどれほどいるでしょうか。
そしてまた却下、審査請求、再審査請求が増えていきます。