2014/04/12
知的障害と障害基礎年金支給停止の話。
最近はあまり仕事のことを書かなくなった。
書かなくなったとも言えるし書けなくなったとも言える。
障害年金という業務が難しく、重要なのはもちろんだけれど、
その手続きを語る上で切っても切れないのが、
日本年金機構という役所とどう付き合っていくか、だ。
そして日本年金機構では多くの社会保険労務士が働いている。
年金機構の至らなさを書くと、つまりボクの同業でもあって、
間接的に社会保険労務士のことを書いている事にもなる。
それでお怒りになる諸兄もおられるだろう。
そう思うと面倒だし、何よりそれが業務に影響することを考えると、
書くこと自体がリスクにもなる。
そういうことをもやもやしたまま、ここ1、2年は
あまり意味もないブログをただだらだらと書いてきた。
面白くないとも思われただろうし、開業してしばらく経てば
そんなものか、と思われた方もいるだろうと思う。
ただ、日常業務はあいかわらずおかしなことばかりで、
ただ呆れるばかりということも多々あるし、
そういうことにいちいち怒るということすらなくなってきた。
しかし、声を上げていかなければ変わることもないし、
また少しずつ書いていきたいなと思う。
最近多くお受けしている相談は、知的障害(発達障害も併存)の
就労困難者が、就労した後に支給停止されているケースだ。
この場合は通常、障害基礎年金を受給していて、
支給停止となったあとはその処分に審査請求、再審査請求するか、
支給停止事由消滅届の提出を行っていく。
今まではこのパターンでなんとかなってきた。
つまりどこかで支給停止が解除されてきた。
この間、通常は医学的な障害状態は変化していない(診断書はそう見える)が、
年金機構の言い分は「日常生活能力は周囲の援助や訓練で変動するため、
その間に支給停止されることはありえる」としている。
物は言いよう、である。
事実、障害状態、就労状況、これらが
なーんにも変化していなくても
年金が出たり出なかったりする。これは事実だ。
障害者雇用の多くは期間の定めのある契約であって、
更新されなければその職を失うことになる。
それは「援助や訓練で変動して障害状態が変動」したわけではない。
健常者と同様に職を失っただけである。
しかし役所が「仕事を辞めたらまた来てください」などと公然と言うように、
実態としては職場があるかどうかで左右している(ように見える)現実がある。
もちろんこれは障害認定基準には書いていないし、
そのような制限はされるべきでもない。運用でカバーしているだけだ。
だからこの動きもまだ完全に固定されたわけではなくて、
その混乱というか間隙を縫って、支給停止が解除されたり、
受給権を得たりしてきた。
不公平だと思われるだろう。その通りで最後は運である。
たとえばボクが2年前に手がけた請求では、IQが比較的高めで、
発達障害がなく、図書館の喫茶店で就労訓練を受けている方で
2級の「永久認定」が出た。
この方は生涯年金が支給され、もう更新の心配はない。
むしろボクが手がけた他の方よりも障害の程度は軽かったかもしれない。
これをなんと言ってまとめていいのか、未だに整理が付いていない。
こういうことが現実としてあって、ボクらはまだ為す術がない。
「こういう裁決がある」と出しても「個別で認定しているので、
ただちにどうこうならない」とかうやむやにされて終わりである。
もちろん個別でどこが違うか、なぜ今回は認められないのか、
具体的に踏み込んではくれない。「総合的に勘案」して終わりである。
これらを踏まえた中で、なんとか受給権を確保してきたのが実態だ。
ここ数年、ボクだけではなく障害年金に取り組む社労士が
皆同じように直面し、あらゆる方法を駆使して受給権を得てきたと思う。
うまくいったものもあれば、うまくいかなかったものもあるだろう。
今回ウチで初めて、審査請求、再審査請求、
再請求の全て退けられてしまった請求が出た。
1年半から2年かかって出た処分だ。ご家族はもちろん疲弊している。
この後、どうすればいいのかまだ考えがまとまらない。
そんな風に最近は仕事をしている。